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| 桜木町駅から徒歩7分。横浜・野毛は、小さなスナックや飲み屋がひしめき合い、どことなくノスタルジックな昭和の香り漂う古き良き下町だ。長屋のように店が並びハーモニカ横丁と呼ばれる飲み屋街、都橋マーケットに、『Women's Networking Cafe はる美』のドアがある。 |
「『はる実』という店名は、前のママから譲り受けたもの。実を言うと、看板を変えるだけでお金がかかるし、面倒なのでそのままなんです(笑)」カウンター8席のみの小さな店舗。出迎えてくれたのは経営者のひとり、タカムラノリコさんだ。 「開業資金、運営費については、共同出資という形で出資を抑えました。うちは4名の経営者がいます。みな女性で、外資系やIT系の会社員。『フォーラムよこはま』という就業支援の場で出会った仲間です。フォーラムが行政の都合で閉館が決まったとき、『わたしたちがいつも集まる場所があればいいね』と盛り上がって」 |
きっかけは女性同士のお喋り。誰でも『いつも集まる場所があればいいな』と思うのは確かだが、それを共同出資という形で実現したバイタリティがすごい。「それで自分たちの店をオープンすることにしたのですが、店舗を構えるということは家賃や光熱費がかかりますよね。友達の家に集まるわけではないので。だから、なるべく家賃などの経費が少ないところというのも、この場所を選んだ理由のひとつです。リバーサイドの独特な雰囲気も気に入ったし、ここならバーをやってもいいかなって」 |
| 実は、都橋マーケットは今から約40年前の東京オリンピック時に、周辺の屋台を収容するため横浜市が建設した飲み屋街。大家さんが横浜市の外郭団体なので、格安の家賃で借りることができるのだ。 「ちなみに家賃は光熱費や諸経費込みで月4万円ぐらい。それを4人で分担するので、月1万円。もし、1ヶ月誰もお客さんが来ないことがあっても、まぁ、1万円ならいいかな、と思ったので」 |
実際、週末になるとお店には女性客やカップルが多数、来店。1杯オール500円という明朗会計で、タカムラさんをはじめとする日替わりママさんとたわいもない話をしたり、時にはカウンター一体となってお喋りを楽しんでいる。 「女性お1人さまも大歓迎。わたしもほかの経営者も、特別なことは何もしていません。ただ、来てくれたお客さんとの時間や出会いを大切にしているだけです。デメリットは、ちょっとぐらい体調が悪くても、会社を休みにくくなったことぐらいかな(笑)」 経営者が普通の会社員ということで、お客さんのほうにも親近感が沸くのだろう。気負いのない『Women's Networking Cafe はる美』は、いつも賑やかな笑顔が絶えない。 |
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| 一方、自宅を店舗にした女性もいる。 人気の街、三軒茶屋で週末のみのサロンをオープンしている宮本真由美さんだ。 雑多に賑わう三軒茶屋から徒歩5分のマンションに、『アロマセラピー&リフレクソロジーサロン アロマヴィータ』がある。あまりにも普通のマンション。看板もない。部屋番号を確認してインターホンを鳴らすと、まるで友達を迎えるように、宮本さんが玄関を開けてくれた。スリッパを出されて、ついつい「おじゃまします」と言ってしまう。 |
部屋に入ると、10畳ほどのリビングが広がり、テーブルとソファ、そしてマッサージ用のベッドがある。そこに生活感はないものの、宮本さんがいれてくれたハーブティを飲んでいると、キレイ好きな友達の家でくつろいでいるような気分になる。まさに隠れ家という名にピッタリ。 「間取りは、サロンとして開放している10畳のほか、自分の部屋が8畳、キッチン、トイレ、お風呂。住宅用のマンションだから、本当に普通の部屋なんですよ。ほら、普通にベランダもあるでしょう?」 家賃は秘密だが、宮本さんはじっくりと時間をかけて物件を検討し、できるだけ安く、そしていい部屋を見つけるために奮闘したという。 |
「以前から三軒茶屋には住んでいますが、サロンを開業するために、現在の場所に引越しをしたんですよ。物件を選ぶのは重要。週末にサロンを経営することを応援してくれる大家さんじゃないとダメだし、
もちろん家賃は安いほうがいい。ここは築30年の物件なんです。リフォームは自分で行うということで安く借りることができました」 平日はマーケティング会社に勤める宮本さんは、得意のリサーチで三軒茶屋という場所を選んだ。 「何事にも下調べは大切。お客さんを、20代〜40代の働く女性に絞っていたので、そういう人が多く住んでいる街をいくつかピックUPして下調べをしました。」 |
| きっかけは、自身のサロン通い。開業するまで宮本さんは、いくつかのサロンに行き、施術を受けることが多かったという。そこで、自分も人を癒してみたい、経営してみたい、と考えたのだ。
開業資金は、ベッド代、敷金、礼金などで約100万円。そのほか、サロンを経営するため、日本リフレクソロジー協会が経営するスクール代が6ヶ月で46万円、アロマ検定1級を取得するための試験代5千円など。
それらの費用、できるだけ早く回収しようとは思っていないという。メニュー料金も平均的な値段に設定し、隠れ家風の完全予約サロンとしては、ずいぶん安い。 |
「お客さんが満足して帰ってくれれば、わたしも嬉しいんですね。だから、儲けは・・・二の次になりますよね(笑)」 自宅開業ということで、オンとオフの使い分けに苦労するのではないかと思ったが、「掃除が大変ってことぐらいですよ」と、宮本さんは笑う。お客さんを玄関で迎えた段階で、気持ちの切り替えはできるのだとか。 サロンはくつろぐための場所。それを考えると、「いらっしゃいませ!」と制服の店員が迎えるサロンよりも、キッチンで入れてくれたお茶を飲みながら、ソファに座って世間話ができる彼女のサロンのほうが、実にサロンらしい。 使い古された『癒し』という言葉も、彼女の部屋に招かれると、本当に癒されるのだから不思議だ。 |
| 今回、取材に協力してくれた2名だが、両者とも会社公認の週末経営。そして、心配しつつも応援してくれる家族や友人の協力もある。 そして、共通しているのが、『儲け先行』ではないということ。広告も出さず、宣伝に値するものは、HPのみだ。これは当然、平日の収入が安定しているゆえ。このゆとりこそが、お客さんのほうにも安心感を与えているのだろう。 また、闇雲に経営にこぎつけず、資金を抑えている舞台裏にも注目したい。共同経営という形も、自宅経営という形も、支出を抑えるための方法としては一理ある。また、じっくりと物件探しに挑んでいるのも特徴。抑えるところはできるだけ抑え、サービスのための資金は調達する。そのプランを練ってこそ、少なくとも『損はしない』経営が成り立つのだ。 では、儲けがない経営の意義は? それは、平日の仕事だけでは知らなかった新しい自分を発見し、それが自信につながるということ。そして、「人との出会い」というお金で買えない価値が発生するのである。お2人の笑顔を見ていると、なによりもそれを実感することができた。 |
| 取材の最後に『平日の仕事をやめて、週末の店が本業になるってことはないですか?』と尋ねてみました。お2人とも、答えはNO。
「定年退職後に、自宅を開放して毎日、サロンを営業するのならいいですけど、いまは考えていないですね」(宮本さん) 「お店を本業でやっている方には申し訳ないのですが、まぁ、帰りのタクシー代と、たまに慰労会ができるぐらいでいいかな、と思っています」(タカムラさん) 平日の仕事が基本にあるからこそ、趣味を生かした週末経営が成り立っていると考えているそうです。 みなさん、週末の時間、何に使いますか? 子供の頃に呟いたあの夢、実現してみませんか? |
| 取材・文/陸田 結衣 |
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