健康

【医師監修】膀胱炎 頻尿や排尿時の痛みが気になったら

■記事監修医師
・女性のこころとからだ事典 からだ編 記事監修
東京都立築地産院産婦人科医長経て
いけした女性クリニック銀座 院長
池下 育子 先生
 
産婦人科医
医療法人社団鳳凰会フェニックスメディカルクリニック理事長・院長
賀来 宗明 先生

 
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膀胱炎は、働く女性に多いといわれる病気。トイレを我慢することはもちろん、オフィスの冷えや過労、ストレスが誘引となることも。きちんと治して、再発を防止しましょう。
膀胱炎は多くの女性がかかりやすいと言われている病気です。
「膀胱炎? かかってもすぐ治るんでしょ?」という甘い認識をしている方は、要チェックです。膀胱炎をあなどってはいけません。トイレが近い。
残尿感がある。おしっこをした後、下腹部が痛くなる。こんな症状はありませんか?

色んな条件が重なることでかかってしまう膀胱炎。
どんな病気なのか、まとめてみましょう。

~こんなサインはありませんか?~
□何度もトイレに行きたくなる
□おしっこを出し切れていない感じがする
□おしっこをしているときやしたあとに痛みがする
□白いモヤモヤが浮いている
□血が混じる

どれか当てはまるものがあったら、はずかしがらずに泌尿器科へ相談しましょう!

【膀胱炎とは?】

膀胱は、普段は骨盤に守られています。丸い袋のような形状で、尿がたまることで袋が伸び縮みするのが特徴。
その膀胱が炎症を起こした状態が、『膀胱炎』です。
膀胱炎は、細菌性の急性膀胱炎と慢性膀胱炎に分けることできます。
間質性膀胱炎は、近年話題にあがることが多くなった慢性膀胱炎のひとつです。
他にも血尿が出る出血性膀胱炎も増加傾向にあり、注意が必要です。

○急性膀胱炎

急性膀胱炎にかかると、まず頻尿が起きます。普段なら1日4~5回、多くても10回以内に入りますが、膀胱炎にかかると10回以上、それも昼夜構わずトイレに行きたくなります。

ひどくなると、トイレから出た瞬間再びトイレへ逆戻りしたり、便器に座りっぱなしになるなど、精神的にも苦痛を伴う病気です。
また、排尿時のとき、もしくは排尿後に強い痛みを感じるようになります。
それだけではありません。排尿した後も残尿感があり、すっきりしません。
更にひどくなると、尿混濁が起きます。
これは膀胱の中に入ってきた細菌と戦うために、白血球が血管から出てきた証拠なのです。

○出血性膀胱炎

出血性膀胱は、その名の通り血尿が出るものです。また、残尿感や微熱を伴うこともありますが、主にかかるのは子供です。

○慢性膀胱炎

慢性膀胱炎というのは、実際のところは急性膀胱炎が治りきっていないまま、治療をやめてしまったという場合が多数を占めています。
痛みがなくなったからと抗生物質をやめてしまったりすると、細菌が完全に膀胱からなくならないままになってしまいます。
ただ、近年は間質膀胱炎という原因不明の膀胱炎も増えてきているのが問題です。

【細菌性の膀胱炎】

細菌性の膀胱炎は、男性よりも女性がかかりやすい病気です。
その理由は、尿道の位置と長さ。
男性の尿道は16~20cmほどありますが、女性はたったの4~5cmしかありません。
膀胱はもともと無菌状態。
しかし、女性の尿道の近くには膣や肛門があり、そこから大腸菌などの細菌が侵入して膀胱炎になることが多いのです。ほとんどの膀胱炎の原因は、この細菌侵入が原因です。

他にはセックスが原因になることも。膀胱炎は、20~30代の女性の既婚女性が特にかかりやすいといわれています。性感染症のひとつであるクラミジア感染症にかかることも、原因にあげられます。

また、疲れや病気で免疫力が落ちたときや、身体が冷えているときは注意しましょう。
細菌が体内に入りやすい条件にならないようにすることが大事です。

【細菌性の膀胱炎を防ぐには?】

1.トイレの後始末は『前から後ろへ』
膀胱に入りやすい細菌のひとつが大腸菌だということは、先ほど説明しました。ですから、排便をした後は『前から後ろへ』と拭くようにしましょう。肛門の周りの菌を、尿道に近づけないようにします。
2.便秘にならないように気をつける
便秘になると、その分体内で大腸菌が繁殖してしまいます。そのような状態で排便すると、多くの大腸菌が外に出てくることになり、普段の排便よりも尿道に菌が入りやすくなってしまうのです。
3.セックス前後はシャワーを浴び、清潔にする

膣と尿道は近くにあります。そのため前戯の際に、膀胱へ菌が入ってしまうことも。ですから、セックスの前にはシャワーを浴び、陰部を洗い、終わったあとはトイレで排尿するとよいでしょう。

4.おしっこを我慢しない
尿を我慢するということは、もし細菌が膀胱に入っていた場合、それが増えてしまうことになります。細菌が入ってしまった場合は、早めに水分と一緒に体外に出してしまうことが大切です。
5.水分を十分に取る
これは上記した通り、細菌の増殖を防ぎ、排出させる効果があります。もし細菌が入ってしまっても、排出してしまえば膀胱炎になりにくくなります。
6.下腹部を冷やさないようにする
膀胱炎にならないためには、血流を悪くしないことも大切です。血流がよいと、膀胱粘膜の抵抗が高くなり、細菌と戦う力があがるとともに、病気になりにくい身体を作ることができます。
7.疲労・ストレスをためないようにする
どの病気もそうですが、疲労やストレスがたまって、抵抗力が落ちていると病気にかかりやすくなってしまいます。膀胱炎もそれと同じ。普段から体力をつけて、ストレスをためないようにし、病気になりにくい身体を作ることを心がけましょう。
8.清潔を保つ
当たり前のことですが、膀胱の近くは清潔にしておきましょう。例えばパンティライナーや生理用のナプキン、タンポンはこまめに取り換えるように。外陰部を清潔に保つことで、細菌の増殖を防ぎます。

【気をつけたい症状】

細菌性の膀胱炎は、水分をたくさん摂り、細菌を排出して抗生物質を服用すれば治る病気です。熱が出たとしても、37.5℃程度。ですが、たまに38℃くらいの高熱が出ることがあります。このような症状が出た場合、膀胱から尿管へ尿が逆流してしまい、細菌を腎臓へと運び腎盂腎炎(じんうじんえん)を起こしている可能性が出てきます。

腎盂腎炎とは、腎臓全体に炎症が起こる病気です。
ここまでひどくなると、腎機能に障害が出てくることもあり危険です。
高熱が出たら、早めに病院へ行きましょう。

【出血性膀胱炎】

出血性膀胱炎は、血尿が肉眼で確認できるものです。
出血性膀胱炎には、主に3つの原因が挙げられます。

1.化学物質による膀胱出血
骨盤部の放射線療法を受けたことがある場合、この原因が疑われます。
2.特異体質や免疫原性の薬物反応による膀胱出血
これは、喘息の治療薬であるトラニラストやシクロフォスファミドなどの薬剤が原因で起こるものです。
3.ウイルス感染による膀胱出血
風邪の原因にもなるアデノウイルスや、10歳までに自然感染するBKウイルスなどによる感染が原因とされるものです。

○本当に出血性膀胱炎かを確認!

検尿の際に、正しく尿が採れているかも大切です。
痔出血や月経血ではありませんか?
また、濃縮尿や薬剤による着色尿(栄養剤を飲んだあとなどの尿)を血尿としていませんか?
検尿では、外観・赤血球の有無、形態を確認し、出血性膀胱炎かどうかを判断します。

○出血性膀胱炎になったら?

ウイルスが原因のものは、十分に水分をとり、排出するよう心がけましょう。潜伏期間は10日程度で、自然治癒します。

薬剤が原因だと考えられる場合は、できることなら薬剤の使用を停止します。できないようであれば、こまめに水分をとり、膀胱炎を予防しましょう。

【慢性膀胱炎~間質性膀胱炎~】

間質性膀胱炎とは、まだ日本には浸透していない病名です。
間質性膀胱炎の症状は、

・いつもトイレに行きたくなる
・尿がたまると下腹部がズキズキする
・昼も夜もトイレが近く、睡眠がとれなかったり、仕事や家事に支障が出る
・尿がスムーズに出ない
・血尿が出る など

細菌性の急性膀胱炎と同じような症状が出ます。

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(BJU Int.86,634-637,2000より引用)

そこで大抵は急性膀胱炎と診断されることが多いのですが、抗生物質を飲んでも症状が改善されないのが特徴。患者の約90%が女性で、年齢に関わらず発症するものです。だいたい20代から症状が出始め、4.50代で認識され、60代でピークになると言われています。年齢に関わらず発症するものなので、心因性のものだと判断され、心療内科や精神科を受診するようになる方も。

しかし、間質性膀胱炎は、けっしてストレスや心因性のものが原因で起こる病気ではありません。
間質性膀胱炎になる原因は、諸説様々ありますがいまだにはっきりと分かっていません。

【間質性膀胱炎の原因】

間質性膀胱炎の原因と挙げられる説をここでいくつか紹介しましょう。

1.膀胱粘膜の脆弱化説

膀胱壁は外側から、粘膜層、間質、筋層と3つの層に分けられています。この粘膜層の表面(グリコサミノグリカン:GAG)が弱くなり、尿が粘膜に浸み込んでくるという説がこれです。
この説では、尿が酸性になると強い症状が出るとされています。ですから、食事に注意をして、尿を酸性にしないことが重要になってきます。

2.アレルギー反応説

私たちの身体には、あらゆる細菌や毒素などから身を守る『免疫』というシステムがあります。ただ、普通に機能していれば問題ない免疫も、過剰に反応してしまうとアレルギー反応が起こり、かゆみや発疹、腫れ、気管支収縮などの症状が現れることがあります。

このアレルギー反応ですが、肥満細胞や好塩基球と呼ばれる細胞が、ヒスタミンという物質を出して起こすものです。この仕組みがうまく機能しないと、間質性膀胱炎の症状が現れると言われています。

3.知覚神経(C-fiber)の過敏性反応説

膀胱は尿がたまることで袋が収縮するところです。膀胱には、収縮を知覚する知覚神経のAδ(デルタ)ファイバーと、痛みに反応する知覚神経Cファイバーの2つがあります。このCファイバーが何らかの原因で痛みに過敏になった状態だという説が、知覚神経の過敏性反応説です。

4.膀胱組織の線維化説

アレルギー反応説で、免疫機能について説明しました。間質性膀胱炎の患者さんは、過剰にこの反応が起きてしまい、結果的に膀胱組織が線維化を起こしてしまうという説がこれです。

【心因性頻尿との違い】

間質性膀胱炎は、まだ日本では浸透していない病気と前述しました。

そのため、診断はとても難しいものになってきます。そのせいで、まずは急性膀胱炎と判断されて抗生物質を投与されたのに、一向に症状がよくならない。それでは別の薬、別の科へ……とドクターショッピングをするようになってしまう患者さんも多くいます。そして、最終的には心因的なものだと診断されてしまうのです。

実際に、心因性頻尿という精神的ストレスで頻尿になる病気もあるのですが、間質性膀胱炎とは全く違う病気なので、根本的解決にはなりません。

【間質性膀胱炎の診断】

○私は間質性膀胱炎?

<p”>間質性膀胱炎は、何度も申しましたがあまり周知されていない病気です。泌尿器科医にも認知されていないことがあります、また、似たような症状の病気も多くあるため、『こういう症状があるから間質性膀胱炎です』とはなかなか言い切れません。
気になるようだったら、まずは疑ってみて、泌尿器科医に症状を細かく伝えてみましょう。

間質性膀胱炎と症状の似た疾患は、数多くあります。

・神経性頻尿
・尿道症候群
・過活動膀胱
・慢性膀胱炎
・刺激膀胱
・女性排尿困難

男性の場合、更に前立腺症や慢性前立腺炎が加わります。

他にも
・膀胱がん
・結核
・腎臓疾患
・膣炎
・性感染症
・子宮内膜症 など
大きな病気が隠れている可能性もあるので注意です。

これらの病気ではないかを確認し、問診に移ります。
問診で特に注目されるところは、

・血縁者に似た症状の人間がいること
・アレルギー性疾患の持病があること

以上2点です。

間質性膀胱炎の患者さんには、この2点の特徴を持っている方が多いため、重要なチェックポイントとなっているのです。

問診が終わったら、いよいよ検尿。
検尿では、出始めや終わりの尿ではなく、『中間尿』を採ります。

○中間尿の採り方

なぜ中間尿を採るのかというと、尿の出始めは尿道口についている雑菌や、膣の分泌物まで一緒に採ってしまう可能性が高いからです。
ここで、正しい中間尿の採り方について説明しましょう。

1.最初にトイレットペーパーで陰部を軽く拭き、尿を少し出す
2.続いて出てくる尿を、カップで採る(全部は採らない)
3.残った尿を出し切る

こうして採った中間尿を検査します。
白血球の増加や出血の有無、細菌の増加やタンパク・糖が多く検出されていないかを調べます。

【間質膀胱炎になったときの食生活】

間質膀胱炎になったとき、食べていいものと食べない方がいいもの(できるだけ控えたほうがよいもの)に分けることができます。
少し成分について難しい話をしましょう。
一般的にあまり食べない方がいいものは、ヒスタミン(アレルギー反応を起こした時に細胞から出される血管拡張作用があるもの)が含まれているもの、チラミン(神経伝達物質のノルアドレナリンが放出される物質)・チラシン(ノルアドレナリンやドーパミンの生成に関わる成分)が含まれているもの、フェルアラニン(神経伝達物質に含まれる必須アミノ酸)、ヒスチジン(神経物質に含まれる必須アミノ酸)、あと『酸』が含まれるものには要注意です。

簡単に、身近な食物で食べてよいものと控えた方がよいもので分けてみましょう。

○控えた方がよいもの

熟成チーズ(カマンベールやブルーチーズなど)、ヨーグルト、大豆(大豆製品も)、トマト、枝豆、そら豆、タマネギ、アボカド、柑橘系の果物、バナナ、メロン、イチゴ、桃、ライ麦パン、アンチョビ、キャビア、コンビーフなど、加工された肉や魚、ナッツ、チョコレート、アルコール、炭酸飲料、酢、タバコ、カフェイン、ダイエット薬 など

○食べてもよいもの

牛乳、熟成していないチーズ、フローズンヨーグルト、トマト・豆・タマネギ以外の野菜、梨、ブルーベリー、控えた方がよいものの中に入っていない果物、パスタ、イモ類、米、ホワイトチョコレート、カシューナッツ、松の実、炭酸抜きのボトル飲料、ほうじ茶、麦茶、ハーブティー

【ストレスをためないことも大切!】

現代社会で生活していく上で、どうしてもストレスはたまってしまうもの。
また、どんなに気をつけていても、肩こりや頭痛、腰痛などになってしまいがちなのもストレスのひとつです。

更に間質性膀胱炎を患っている方は、トイレが近かったり、夜中に目が覚めてしまうなど、余計にストレスを感じやすくなっています。
ストレスと膀胱の痛みは密接に絡んでいて、ストレスがたまっていると下腹部の痛みに過敏に反応してしまう傾向にあります。

健康体でもストレスがたまると、身体が疲れやすくなり、免疫力も低下してしまいます。
よって、うまくストレスを解消することが膀胱炎の予防にもなるのです。

○ストレス解消法

たまりやすいストレスも、少しの心がけで解消できることがあります。

・ストレッチ

仕事や家事の途中に背中を思い切り伸ばしたり、肩を回してみたりなど、軽い運動をやってみましょう。
少し動くだけでもリラックス効果を得ることができます。

・腹式呼吸

お腹(丹田)に力を入れて、息を吸ったり吐いたりをゆっくりと繰り返します。
丹田とは、へその下にあたる場所です。腹式呼吸をすることで、自律神経のバランスを整えることができます。
腹式呼吸はインナーマッスルを鍛えることにもなるので、ダイエットにも効果的です。

・ヨガ

ヨガはゆっくりした動きで、身体のゆがみをとることができます。
ヨガ以外でも、整体で骨盤の位置をなおしてもらうのもよいかもしれません。
身体のゆがみがとれると、全身がほぐれ気分もよくなります。

・マッサージ

自分で行う場合は、お風呂あがりに行うと効果的です。
マッサージオイルなどを使って、こっているところを揉みほぐしたり、足の先からさするように行うリンパマッサージなどを行ってもよいでしょう。
ただし、指圧を行う場合は、腹部にはあまり力を加えないように注意。

・アロマテラピー

時間に余裕があったら、精油をたいて、気に入った音楽を聴きながらゴロゴロしてみてはどうでしょうか。
デパートなどで精油を選ぶだけでも楽しいですし、リラックス効果は抜群です。
頭をスッキリさせたいときは、柑橘系の香り、リラックスしたいときはラベンダーやゼラニウムなどがオススメです。

text/Emii Asano
illustration/Tomoe Sasaki

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