主演:菅野美穂 × 原作:西原理恵子 × 監督:吉田大八

映画『パーマネント野ばら』

5月22日(土)、新宿ピカデリー、シネセゾン渋谷、
ヒューマントラストシネマ有楽町、
シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー

吉田大八監督インタビュー

Q.ではまず、最初にこの企画をもちかけられた時の率直なお気持ちをお聞かせ下さい。

女性が書いた女性の話をなぜ男の自分に託してくれたのか、何を期待されているのか分からず、最初は困惑しましたね。例えば『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』は自分自身では女性を描いているという意識はなく、あれは青春の話だと思っているんです。でもこの映画は女性の内面を真正面から描かないといけないじゃないですか。そういった意味で構えた部分もあったと思います。でも女性の気持ちを女の人以上になんてわかるわけがないし、わかったふりはできないなと。何か意味があるのだとしたら、男の僕が一歩距離を置いた目線で女性を描くことに意味があるのかもしれませんね。

Q.本作は西原理恵子さんの原作漫画が基になっていますが、映画化するにあたって特に意識した点はありますか?

原作には漫画ならではの表現方法とか、漫画だからこそ面白いところとかが山ほどあって、ついついそういったものを自分の映画にも持ち込みたくなるんです。例えば原作ではすごく心に染みる西原さんの強烈な言葉がモノローグで綴られていて、当初は映画にもモノローグを入れる予定がありました。でもやっぱりそこは漫画の世界だから素晴らしいのであって、もちろん映画に入れられなくはないけれど、入れたところで漫画を超えられないのであれば、最初から入れるのはやめようと思いました。むしろ映画で何ができるかを考えるようにしました。それはやはり映画だからこそ映せる実際の風景であったり、あとは役者さんの演技だったり表情ですよね。

Q.表情といえば、ラストシーンの菅野さんの表情。なんとも言いがたい、すばらしい顔をされていますよね。あの場面では監督からはどのような指示をされたのですか?

あの表情を撮るまでは本当はアップの顔で終わる映画だと思っていませんでした。
別に僕のほうでこういう表情をしてくださいという指示はしていなかったんです。だからあのシーンは菅野さんの中から出てきた、彼女なりに解釈した気持ちの表現なんですよね。でもあの画が取れた瞬間、「菅野美穂ってすごいな」って現場にいる皆が思いましたね。

Q.切ないけれど、恐ろしいとか、グロテスクだけど美しいというような、相反する部分をはらんでいる表情ですよね。

常に綺麗なものの裏には汚いものがある。逆に汚いものが裏にない美しさってなんか薄っぺらいじゃないですか。優しくみえて厳しいだとか、そういった内部に矛盾を抱えながら生きているほうが、魅力的だなと思っているんです。それは人間にしても物語にしても。

Q.菅野さんはどうゆう女優さんだと思いますか?

僕から見たら、見ていて癒される存在というイメージはなく、底が深くて見えない感じがしますね。なおこは前半と後半で見せる顔が違うじゃないですか。ある種の芯の強さと、脆さや儚さが共存している雰囲気の女優さんで菅野さん以上の人は見当たりませんでした。菅野さんの顔を見ていると何の迷いもないようにも見えるし、不安を抱えているようにも見える。単純じゃないところがいいですよね。

Q.菅野さんが演じられたなおこという女性についてどう思われますか?

原作は「大人の女性の恋愛を描いている」といわれますが、じゃあ大人の女性って何なのか、大人と子供の線をひくとしたらどこなのかということを考えたとき、親になるというのがそのひとつだと思うんです。母親であることと女であることが果たして両立するのか。普通、子供からしたら母親は恋愛しないものだという気持ちがあるじゃないですか。それがもし、母親が自分の父親でない男性と恋をしているとしたら、子供からすればそれって自分の存在自体を脅かされるようなすごく怖いことだと思うんですよね。世の中で母親でありながら恋愛をしている女性はきっと切り替えがうまくて両立ができていると思うんです。だけどなおこはその切り替えスイッチが壊れてしまっていて、自分の意識していない時にガチャっとはいってしまうような人だと思いますね。原作と少し違うのは、娘からの視点が映画のほうが盛り込まれている点だとおもいます。もちろん原作にもそういった世界は描かれているんですが、映画として母と娘の痛みというのをしっかり押さえていきたいなと思いました。男の自分がこの作品に向き合うスタンスを決める上で、女性の気持ちはわからなくても親子の気持ちはわかるかなと。

Q.なおこ以外にも強烈なキャラクターが光っていますよね。それぞれの女優さんをキャスティングした理由を教えてください。

みっちゃんは高知の女性らしく喜怒哀楽が激しく情が深い。ダイナミックなキャラクターが欲しかったので、おそらく今日本で活躍している中で容姿にしても演技のメリハリにしても一番ダイナミックな女優であろう小池さんにお願いしました。僕の思う「高知の女性」というイメージが小池さんだったんです。西原さんもそう思っていらっしゃったようです。

Q.「高知の女性」のイメージというと?

西原さん曰く、高知の女の人は基本的に生活する上で男をあてにしていないらしいんですよ。高知は自然に恵まれている分、昔から食べ物を確保するのに苦労しなかったらしく、男の人は狩にいくのではなくブラブラしている。その分女の人がしっかり働いて男を養い、強くなっている。男をあてにしない強さと魅力ですよね。
池脇さん演じるともちゃんは、みっちゃんとのバランスもあって少し控えめにしているんだけれど、奥に秘めているものは近いものがありますよね。控えめだからこそ鬱陶しく思われてしまいがちだけど、内側にはしっかり芯がある女性です。弱そうで実は強い。そういった表現を池脇さんのような女優さんにやっていただきたいと思いました。

Q.この映画に登場する女性は皆男運が悪く、男性陣はことごとくダメ男ですよね。監督はそういった男性陣に共感する部分はありましたか?

共感というか、羨ましいですよね。あんなに清々しいまでに無責任に生きて行けたらいいなって思いますよね。実際は、家族とかもいて無責任に生きることはできないわけですから。男性が出演しているシーンは撮っていて楽しかったです。

Q.原作者の西原さんもこの映画を非常に気に入っていらしたようなコメントが舞台挨拶でもありましたが、それを聞いていかがですか?

やった!というかんじです。自分が勝手に設定していた勝負に勝ったというか・・・別に勝ち負けって意味じゃないんですけどね。やっぱり原作者から僕はお話を借りているわけだから、原作者の方に貸した意味があったと思っていただけたら何よりも嬉しいですよね。原作のファンの中には原作のほうが良かったっていう人が沢山いると思うし、この先公開したらいっぱいそういう声を聞くことになるとおもうけど、「でも西原さんは良いって言ってくれたし!」ってなんとなく思ってられるじゃないですか(笑)

Q.結構プレッシャーがあると燃えるタイプですか?

そう思いますね。これはCM育ちということも関係しているのかもしれないけれど、ここまでをこの時間でやりなさいという色々制約のある中でどうやるかということだけを考えて苦労してきた人間なんで。映画ってわりと監督の好きにやっていいよっていうのが多いじゃないですか。今まで狭いところで走り回っていたのが、急に広いところで遊んでいいよっていわれても、誰か線引いてよ!みたいな。(笑)

Q.CM業界ご出身の吉田監督にとって本作は映画3作目ですが、監督が映画を撮る上でのこだわりは?

役者で映画を観るのが好きだし、人の顔を撮るのが好きなんですよね。だから自分で映画をとるにしても物語を考えるにしても、やっぱり魅力的な顔がどういう場面でどういうタイミングで出てくるかというのが出発点にあって、話を組み立てたり、風景を選んだりしていますね。表情の選び方に関しては自分の中で時間をかけてこだわっている部分だと思います。魅力的な表情を2つ並べただけで出来上がる空気ってあるじゃないですか。その空気を全体的な映画の空気にしてしまおうみたいな。

Q.監督の女性観を教えてください。

女性のほうが自分のことをシビアに考えていることが多い気がします。女性と話していると学ぶことも多く、「なるほど」と思う事が多々あります。手放しで「女性は偉大だ」というつもりはないんですが、女の人のほうが自分が「女性」であるということを深く考えている気がします。自分より物事を複雑に考えて生きている人って怖いですよね。全て見透かされているような。基本的に女性に対するデフォルトがビビリモードなんですよ(笑)

Q.では最後に、観客の皆さんに見どころをお願いします。

女性の話なんですけど、僕自身がポジティブな意味での女性に対する恐れというか畏敬の念をもって撮っているので、男性の視点からみても相当なインパクトがある作品になっていると思います。それから、自分としては一番こだわっていたのは役者さんの表情なので、みなさんが今まで見た事のない役者さんそれぞれの魅力的な表情を期待してみていただきたいです。


◆STAFF
監督:吉田大八
原作:西原理恵子『パーマンネント野ばら』(新潮社刊)

◆Cast
菅野美穂 小池栄子 池脇千鶴/宇崎竜童 夏木マリ/江口洋介

◆配給:ショウゲート

◆上映時間: 100分

(C)2010映画『パーマネント野ばら』製作委員会



映画『パーマネント野ばら』吉田大八監督インタビュー

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