健康

【医師監修】関節リウマチとは?|健康

■記事監修医師
東京女子医科大学付属
膠原病リウマチ痛風センター
膠原病リウマチ科 准教授
中島 亜矢子 先生

 

『リウマチ』と聞いて、あなたはどのようなことを思い浮かべますか?
手がこわばったり、手指や膝などの関節が痛んだりすることを想像するのではないのでしょうか。
『関節リウマチ』という病気は、そのような症状が起こる病気ですが、決してご高齢の方の病気ではありません。働き盛り世代の方にも起こる病気なのです。しかし最近、この『関節リウマチ』の治療が非常に進歩してきたのです。

リウマチと診断された年齢

出典元:公益社団法人 日本リウマチ友の会『2010年リウマチ白書』より
日本には関節リウマチの患者さんは約60~70万人いると言われており、決してまれな病気ではありません。男女比は約1:4、女性は男性の4倍かかりやすいと言われています。
関節リウマチと聞くと、『おばあちゃんの病気』と多くの方が思うかもしれません。
ですが、それは間違い。発病した年齢が一番多いのは、30~50代で、なかでも子育てや仕事で忙しい働き盛りの40代の女性です。

関節リウマチははじめ、手指の小さい関節、手首の関節、足の趾の付け根の関節などの痛みや腫れの症状から始まります。朝、手や体全体がこわばって動かしにくいという症状(朝のこわばり)がみられるほか、炎症が強いとだるさや微熱など感じることもあります。次第に、膝や足首の関節などにも痛みや腫れが出てくることがあります。
「忙しかったから・・・?」、「睡眠不足だから・・・?」、「気のせい?」など迷われることもあるかもしれませんが、気になる症状が2週間以上続くようであれば、受診しましょう。逆に、このような症状があったからといって、すべての方が『関節リウマチ』というわけではありませんので、過度な心配は避けましょう。


関節リウマチは、本来ならば細菌やウイルスなど外から侵入した敵から体を守るための免疫機能に異常が発生し、自分自身を攻撃してしまう『自己免疫疾患』と呼ばれる病気の一つです。関節リウマチでは、自分の関節が敵と誤って認識されて炎症が起こってしまい、そのために関節に痛みや腫れ、熱っぽさなどがみられるようになるのです。


病気が進むと腫れて痛む関節の箇所が増え、疲れやすくなったり、重いものが持てなかったり、階段の上り下りがしづらくなったり、仕事や家事育児などの日常生活動作に不自由さが出てきます。さらに進行すると、手足などが変形したりすることもあります。


病気が進むと腫れて痛む関節の箇所が増え、疲れやすくなったり、重いものが持てなかったり、階段の上り下りがしづらくなったり、仕事や家事育児などの日常生活動作に不自由さが出てきます。さらに進行すると、手足などが変形したりすることもあります。


関節リウマチは、短期間で治る病気ではありません。しかし、ここ10年ほどの関節リウマチ治療の進歩はめざましいものがあります。昔は寝たきりになる、指が変形するなどのイメージが強かった関節リウマチの病状経過は大きく変貌しているのです。
特に、早期診断によって早期治療が開始できることで、日常生活動作に著しい支障が出ていた患者さんの生活は大きく改善されています。特に、『生物学的製剤』といわれるお薬の登場によって、関節リウマチ治療は飛躍的に進歩し、関節リウマチと診断される前と同じような生活を送ることができる患者さんもみられます。
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 膠原病リウマチ科 中島亜矢子准教授


関節リウマチでは、手や足の関節に炎症が起きます。炎症がおきると関節の痛みや腫れ、微熱や倦怠感などの症状が現れます。関節の炎症が長く続くと関節の変形にむすびつきます。
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 膠原病リウマチ科の中島先生に優しく、わかりやすく関節リウマチについて解説していただきました!

関節リウマチは特に早期発見が鍵になります。
気になる症状があったら、自己判断せずに怖がらずに病院へ行きましょう。

どういう症状がでますか?
A
『リウマチ科』があればリウマチ科へかかりましょう。
お近くにリウマチ科がなければ内科もしくは整形外科を受診しましょう。
必要に応じて、リウマチ専門医のいるリウマチ科へ紹介状を書いてくださると思います。

自分で何に気をつけたらいいですか?
どこの関節が、いつからどのように痛むか、手のこわばりはないかなど自覚症状や経過を伺います。
そのほか、これまでのご病気の治療歴、現在他のご病気にかかっていてお薬を服用していないか、お薬の副作用などの経験はないかなども伺います。日頃の状態をメモしておいていただけると診察もスムーズにすすみますね。
クリニックではどのような治療がありますか?
A
診察では、手足の関節に腫れがないか、押されて痛くないかなどを診察します。関節以外にも皮膚症状やリンパ節に腫れがないかなども診察します。
検査は、血液検査、尿検査、レントゲン検査などを行います。血液検査では、リウマトイド因子・抗CCP抗体といわれる免疫異常がないか、炎症の程度はどのくらいかを調べます。また、関節の痛みをおこすようなほかのご病気が隠れていないか、また、肺・肝臓・腎臓などにも問題が無いかなどをチェックします。
レントゲンでは腫れや痛みのある手足の関節を撮影し、関節の状況をみます。
どういう症状がでますか?

A
治療方法は患者さんの状況や症状に応じて異なります。
一般的には、自分自身を攻撃する『異常な自己免疫』を是正する『抗リウマチ薬』もしくは『免疫抑制薬』と呼ばれるお薬を中心とした治療がおこなわれます。多くのものは内服していただくお薬です。痛みが強い時は『消炎鎮痛薬』、炎症や全身状態が強い場合には『ステロイド』と言われるお薬などを併用します。
抗リウマチ薬』、『免疫抑制薬』による治療を行っても関節の炎症をコントロールできない患者さんもいらっしゃいます。その場合には9 年ほど前から日本でも使われるようになった『生物学的製剤』と言われる種類のお薬を使用します。最近、関節リウマチは発病してから早い段階で関節の破壊が進んでしまうことがわかってきました。『生物学的製剤』には、奏功すればこの関節の破壊が進むのを抑える効果があります。日本では現在3種類6剤の『生物学的製剤』の使用が可能となっています(2012年6月現在)。皮下注射や点滴注射で用いられます。
毎週注射するお薬もあれば、1‐2か月毎に注射するお薬もあり治療の選択肢が広がってきています。どなたにでも適応があるというわけではなくまた薬剤費も高額ですが、『免疫抑制薬』で十分効果が得られない場合には、考慮すべき薬剤です。すべての患者さんに有効でかつ副作用がないというわけではありませんので、おひとりおひとりの患者さんの状態や症状、薬との相性を良く見極めた上で、治療が行われます。

A
『関節リウマチ』と診断されたら、一般的に2~4週間ごとの通院になります。
治療薬によって関節炎がどの程度抑えられているかなど、診察や血液検査などでご病気の状況、治療の効果などを見ます。
A
そんなことはありません。
ご病状が重く治療を優先するため妊娠・出産を控える方もいますし、治療薬によっては妊娠を避けるべき薬があるのは事実です。しかし、妊娠出産を優先したいという方には、妊娠出産に影響の少ない薬剤を選択し積極的に関節リウマチの治療をしつつ妊娠出産を目指していただくようになってきています。
今は治療の選択肢も広がっています。まずは担当の先生とよく相談しましょう。

A
関節リウマチになりやすい遺伝的な要因はあります。
しかし、関節リウマチという病気そのものは遺伝病ではありません。遺伝的要因と環境要因の双方が関与するといわれています。
A
1. 十分な睡眠と安静、バランスの良い食事を心がけましょう
炎症が強い時には、無理をせず、体を休ませましょう。関節リウマチに特化した食事制限はありません。バランスのとれた食事を心がけることが大切です。

2. 過度な労働は避けましょう、でも適度に体を動かすことも大切です
重いものを持ったり長い距離を歩いたりして、翌日まで痛みが残るようであれば、使いすぎの可能性もあります。逆に、少し痛くても、体のあちこちの関節を動かせる範囲で動かす(関節可動域の保持)、少し力を入れる(筋力の保持)などの運動は大切です。

3.定期的な受診を心がけましょう
定期的に受診しましょう。良くなったからといってすぐに薬を中止したりするのはやめましょう。また、いつもと異なる熱や発疹、息切れや強いだるさを感じた際は、我慢せず予定を早めて受診しましょう。

4.一人で悩まずに!
一人で悩まず出来ないことをサポートしてくれるような良き理解者が身近にいると、身体的にも心理的にも心強いですね。

関節リウマチは、早期発見・早期診断され適切な治療を受けることで日常生活に支障が出ることが少なくなります。気になる点があれば、すぐに近くのリウマチ科、もしくは内科、整形外科などの診察を受けましょう。
中島先生、お忙しい中ありがとうございました!
text/Emii Asano

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