健康

【医師監修】子宮頸がんの治療法 子宮ガン 女性のこころとからだ事典

■記事監修医師
・女性のこころとからだ事典 からだ編 記事監修
東京都立築地産院産婦人科医長経て
いけした女性クリニック銀座 院長
池下 育子 先生

産婦人科医
医療法人社団鳳凰会フェニックスメディカルクリニック理事長・院長
賀来 宗明 先生

子宮がん特集 Part1
子宮がんが見つかったら、一刻も早く治療をはじめましょう。治療方法は、がんの広がり具合や年齢にもよりますが、妊娠出産を希望するか、治療後のQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)を考えた場合にどこまで切除するかなどを、よく医師と話し合って決めることが必要です。

【子宮頸がんの治療法】
子宮頸がんの治療法には、外科療法、放射線療法、抗がん剤療法の3つがあります。

●外科療法

1.レーザー療法

高度異形成や0期に行われる方法です。膣からレーザーを入れて、がん細胞のある子宮頸部の組織を切除します。手術時間が短く、外来で手術できることもあり、現在妊娠中だったり、手術後の妊娠・出産であっても可能です。ただ、子宮筋腫があったり、帝王切開で子宮口が変形している場合など、レーザー治療ができないケースもあります。

2.子宮の一部を取る<円錐切除術>

0期あるいは>Ia期に行われる検査をかねた手術です。子宮を残すので、手術後の妊娠・出産は可能です。子宮頸部の組織を円錐状にくり抜き、切除した断片を細かく切って精密な検査をします。その結果が0期か軽いIa期であれば、治療は終了です。取り残しがあると判断されれば、子宮を取るなど次の治療に進みます。方法としては、普通のメスによる切除、高周波電気による切除、レーザーによる切除があります。

3.子宮を全部取る<単純子宮全摘出術>

0期やIa期に行われる手術で、子宮のみを摘出します。膣から摘出する方法と、おなかを切って摘出する方法があります。状況によっては、両側付属器(卵巣と卵管)を切除することもあります。卵巣を切除すると、閉経前の人でものぼせや動悸、めまいなど、更年期障害同様の自律神経失調症状が出ることがあります。個人差はありますが、症状がひどい時にはホルモン補充療法で抑えるようにします。

4.子宮の周囲も取る<広汎子宮全摘出術>

子宮と卵巣、卵管、膣の一部など子宮の周囲の組織を取り、骨盤内のリンパ節も切除します。リンパ節には、がん細胞が転移している可能性が高く、再発することが多いためです。注意深く切除しても、膀胱や直腸へつながっている、神経や血管を切らねばならないことがあり、手術の後遺症として排尿・排便障害が出やすくなります。また、骨盤内のリンパ節を取ってしまうと、リンパ液がスムーズにいかなくなって、下半身や外陰部に浮腫(むくみ)が出ることもあります。
5.骨盤内のすべての臓器を取る<骨盤内臓全摘術>

骨盤内の臓器をすべて除去するめったに行なわれない手術です。がん細胞が子宮を超えて広がっている場合に行われますが、尿管や膀胱、直腸、肛門まですべて除去するので、排泄はすべて人工的な処置になります。手術後の生活や完治の確率などを考慮して、手術はぜずに放射線療法と抗がん剤だけで治療したり、広汎子宮全摘術を行って、あとは放射線や抗がん剤で治療するということも考えられます。

●放射線療法

放射線でがん細胞をたたく
放射線には、がん細胞を殺したり、腫瘍を小さくする働きがあり、子宮頸がん(扁平上皮がん)には高い効果があります。体の外側から放射線をかける方法(外部照射)と、子宮内部にチューブを入れて直接子宮に照射する方法(腔内照射)があり、一般に併用して行われます。がん細胞が広く浸潤したIII期・IV期や、高齢などで手術に耐えられない場合、また手術後に目に見えない微小ながん細胞を殺す場合などに行われます。

下痢や吐き気、放射線焼けなどの副作用も
おなかに放射線をかけるため、副作用として下痢や吐き気、食欲不振、しばらくしてから尿や肛門からの出血が起きることもあります。また、皮ふが放射線に焼けて赤くなり、やがて黒ずんできますが、時間がたてばもとに戻ります。
●化学療法(抗がん剤療法)

がん細胞の増殖を抑える
抗がん剤で、活発に細胞分裂するがん細胞を抑える方法です。点滴や飲み薬、血管または筋肉注射などで全身に投与するので、かなり進行したがんや再発で、全身にがん細胞が散らばっている場合は、有効な治療法です。また手術後、目に見えない微小ながん細胞が、全身に散らばっている可能性がある場合に行われたり、手術前に抗がん剤で腫瘍を小さくしてから摘出する場合もあります。

吐き気や脱毛など強い副作用
抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞にもダメージを与えるので、強い副作用があります。主な症状は、激しい嘔吐や食欲不振、脱毛、倦怠感、皮ふのトラブル、白血球の減少などです。

text/Mami Kakuta
illustration/Tomoe Sasaki

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