スパイスは女性の味方 家庭でできるスパイスの上手な使い方

最近は、国内で入手できるスパイスが格段に増え、 手軽にスパイスを使えるようになりました。 しかし、その効果を熟知し毎日の食生活に 活かしているのは、まだごく一部。 夏バテしやすいこの時期に、女性の気になる様々な 症状を和らげるその働きを知って、毎日の食生活に スパイスをうまく取り入れ、疲れやすい夏から秋を乗り切りましょう。

スパイスとは

最近は、世界中の食材が手に入り、各国の料理が家庭で手軽に味わえます。その背景にあって、食のシーンを豊かにしてくれているもの、それがスパイスです。さまざまな料理に気軽に利用する人が増えています。日本で流通しているスパイスは、約100種類。近年は生のハーブもよく使いますが、日本の食品分類(厚生労働省が公表した食品衛生法等の一部改正について記した食安発第1003004号)では、スパイスとハーブは香辛料であり、それぞれ次のように定義されています。

香辛料とは
食品に特別な風味を与えることを目的とし、比較的少量使用される種々の植物の風味または芳香性の葉、茎、樹皮、根、根茎、花、つぼみ、種子、果実、または果皮等をいう。香辛料は、スパイスおよびハーブに大別される。

スパイスとは
食品に風味付けの目的で比較的少量使用される種々の植物由来の芳香性樹皮、根、根茎、つぼみ、種子、果実、または果皮をいう。

ハーブとは
食品に風味付けの目的で薬味として比較的少量使用される種々の主に草本植物の葉、茎、根および花からなり、生のまま、または乾燥したものが使用されるものをいう。

スパイスの起源

サルの食行動の中には、明らかに食べ物に味付けをする行為が見られます。スパイスの起源は、有史以前のサルまでさかのぼれるかもしれません。歴史を紐解くと、古代エジプトでは、スパイスの防腐、殺菌、  消臭作用などはすでに知られており、ミイラの保存にシナモンやクローブが使われています。中世に入ると肉食の多いヨーロッパでは、コショウの需要が増えます。スパイスの多くは東南アジアが原産地。ヨーロッパでは栽培できなかったため、金と同じ価値のある貴重品でした。当時の人たちにとってスパイスを育む東洋は、まさに宝の島。海の冒険者たちが東洋に進出する大航海時代へと突入するのです。

「おいしい、楽しい、心地よい」スパイス生活を

時代を経て、今ではスーパーの売り場で手軽に購入できるスパイス。科学的な研究が進み、スパイスのよい香りには、脳の神経を刺激して健康維持に役立つ働きがあることも分かっています。体調がくずれたときは、スパイスを料理にひとふりするだけで気分が切り替えられます。これも大事な効用ではないでしょうか。例えば、お茶の味や香りは気分をリラックスさせますが、スパイスも似た存在といえるかもしれません。私たちの生活にうるおいを与えて、健康にも役立つスパイス。「おいしい、楽しい、心地よい」を心がけて、食生活に取り入れてみませんか。

スパイスの分類・組み合わせ

家庭にある主なスパイスは、使用するときの形態、部位、食用と薬用になるものなどに分類できます。また、数種類のスパイスを組み合わせたミックススパイスや、シーズニングスパイスも私たちの身近にあるものです。

スパイスの分類
  • 生と乾燥
  • スパイスは生と乾燥とに大きく分けられます。料理には生と乾燥したもの、その両方を用いるものがあります。
  • <生と乾燥の両方が使われるスパイス>

    しょうが、ニンニク、ゆずの果皮、パセリ、タイム、バジル、オレガノ、タラゴン、マジョラム、ローズマリー、チャービル(あさつき)など


  • 生と乾燥
  • スパイスは芳香性のある植物のさまざまな部位を使用します。身近にあるスパイスを部位別に分類すると次のようになります。

〔表1〕部位別 スパイス(およびハーブ)の分類

果実・果皮 種子 花・つぼみ 根・根茎 樹皮
オレガノ パセリ クチナシ カルダモン クローブ ターメリック
(ウコン)
シナモン
サンショウ
(花椒)
マジョラム コショウ クミン サフラン しょうが  
シソの葉 ローズマリー サンショウ
(花椒)
ごま ミョウガ ニンニク
(ガーリック)
 
セージ ローレル トウガラシ マスタード   わさび  
タイム ハッカ バニラ        

※クローブはつぼみ、サフランは雌しべ、ニンニク(ガーリック)は、鱗茎を使用します。


  • 用 途
  • スパイスには、「香りづけ」「味つけ」「辛みづけ」「色づけ」「におい消し」の5つの働きがあります。それぞれのスパイスの特長を知っていると料理に上手に活用できます。 もちろん、1つでいくつもの用途をもつスパイスもあります。
  • <5つの働きとおもなスパイス>

    • 香りづけ……シナモン、バジル、ごま、バニラ、クミン
    • 味つけ………ニンニク(ガーリック)
    • 辛みづけ……しょうが、わさび、マスタード、コショウ、サンショウ(花椒)
    • 色づけ………サフラン、パプリカ、ターメリック(ウコン)、クチナシ
    • におい消し…ローズマリー、セージ、タイム

  • 食用と薬用
  • スパイス独特の香り、色、辛味の成分には、料理をおいしくするだけでなく、健康に 役立つ作用があります。食用と薬用の両方に利用されているスパイスには、次のようなものがあります。
  • <食用と薬用の両方に使われるスパイス>

    クローブ(丁字、丁子、丁香)、シソの葉(蘇葉)、シナモン(桂皮、桂枝、肉桂)、しょうが(生姜)、ハッカ(薄荷)、みかんの皮(陳皮)、クチナシ(山梔子)、フェンネル(茴香)、ヨモギ(艾葉)、ナツメグ(肉豆蔲、肉荳蔲)、カルダモン(小豆蔲、小荳蔲)、スターアニス(八角)、フェヌグリーグ(胡芦巴)、ターメリック(ウコン、鬱金)、ごま(胡麻)、トウガラシなど
    ( )は生薬名・別名


スパイスの組み合わせ
  • 生と乾燥
  • スパイスは芳香性のある植物のさまざまな部位を使用します。身近にあるスパイスを部位別に分類すると次のようになります。

〔表2〕 ミックススパイス

ミックススパイス 使われているおもなスパイス
カレー粉 ターメリック(ウコン)、パプリカ、ナツメグ、シナモン、クローブ、カルダモン、フェンネル、クミン、フェヌグリーグ、コショウ、トウガラシなど
ガラムマサラ クミン、コリアンダー、シナモン、ナツメグ、フェヌグリーグ、クローブなど
七味唐辛子 トウガラシ、サンショウ(花椒)、陳皮、ごま、けしの実、あさの実、青のり
ブーケガルニ コリアンダー、セロリの種子、パセリ、タイム、ローレル、クローブ
チリパウダー ニンニク(ガーリック)、パプリカ、とうがらし、オレガノ、クミンなど
五香粉 クローブ、サンショウ(花椒)、スターアニス、カシアの樹皮(肉桂)、陳皮
ミックスペッパー 黒、白、緑、ピンクのコショウをブレンドしたもの〔写真1〕

  • シーズニングスパイス
  • スパイスに塩や砂糖などの調味料を加えて味付けしたもの。料理に手軽に使えて、本格的な味わいが楽しめます。家庭ではご飯や赤飯にふりかけるごましおも身近なシーズニングスパイス。このほか、ペッパーソルト、ガーリックソルト、シナモンシュガー、サンショウ(花椒)塩、ステーキやハンバーグ用、フライドチキン用、パスタ用など多様なシーズニングスパイスが市販されています。
スパイスの価値・効能 ~女性の健康を守る7つの働き~

スパイス(およびハーブ)は、薬用としても世界で幅広く利用されています。ここでは、主な効能ごとに、夏から秋にかけてアラサーからアラフォー世代の女性の健康維持に役立つスパイスをご紹介しましょう。

冷え症対策・夏バテ予防
  • しょうが
  • トウガラシ
  • ガラムマサラ
  • シソの葉
  • タイム
  • ミョウガなど
  • オフィスや室内は冷房がきいて、飲み物や食べ物も冷たいものばかり。
    これでは体は冷えきってしまいます。夏こそ冷え症対策が大切です。
    しょうがには体を温める作用があり、薬味などに使うと冷えを防ぎます。また、東洋医学ではシソの葉、ヨーロッパではタイムなどが風邪薬として使われています。

むくみ予防・デトックス作用
  • カレー粉
  • トウガラシ
  • しょうが
  • パセリ
  • サンショウ(花椒)
  • シソの葉
  • 女性に多いむくみは、塩分のとり過ぎが一因です。塩分をとり過ぎると、水分をたくさん飲む→夏は冷えや疲れによって代謝が低下→体内に余分な水分が留まる、という悪循環になりやすいのです。スパイスには減塩効果があるので、塩分が少なくても満足感が得られ、むくみの予防に役立ちます。また、カレー粉には発汗作用を促進する働きがあり、体内に溜まった老廃物を排出してくれます。

抗酸化作用・アンチエイジング
  • ご ま
  • 古代中国では、老化防止の妙薬といわれたごま。小さな粒の中に、ビタミンEやセサミノールなど強力な抗酸化物質が含まれています。夏は紫外線の影響で体内に活性酸素が発生しやすくなりますが、抗酸化物質がすみやかに消去して老化や生活習慣病を予防します。ごまの皮は硬いので、すりつぶして料理に活用すると有効成分が吸収されやすくなります。

基礎代謝を高めて、肥満を防ぐ
  • トウガラシ
  • サンショウ(花椒)
  • トウガラシの辛味成分のカプサイシンには、代謝を高めて体温を上昇させたり、脂肪燃焼力をアップさせたりする作用があります。基礎代謝は年齢を重ねると低下しますが、料理に上手に取り入れると肥満防止に役立ちます。また、麻婆豆腐に使うサンショウ(花椒)にも自律神経の働きを活発にして脂肪燃焼を高める効果があります。

疲労回復・ストレス解消
  • ニンニク(ガーリック)
  • コリアンダー
  • シソの葉
  • パセリ
  • ニンニク(ガーリック)の刺激的なにおいは、アリシンという成分。豚肉などビタミンB1を含む食品と一緒にとると体内に吸収されやすくなり、夏の疲労回復に役立ちます。また、コリアンダー、シソの葉、パセリの香りには、気分を爽快にして精神的な疲れを和らげる作用があります。

胃腸の働きを助けて、おなかスッキリ
  • しょうが
  • カルダモン
  • バジル
  • スターアニス
  • フェンネルなど
  • スパイスには消化を促進して胃の負担を軽くしたり、腹部の膨満感や 便秘を解消したりする作用があります。女性に多い便秘は肌荒れの原因になります。ストレスで胃腸の調子が乱れたときは、スパイスを活用して 胃腸の働きを助けましょう。

血液循環をよくする
  • ターメリック(ウコン)
  • シナモン
  • トウガラシ
  • サフラン
  • ターメリック(ウコン)は、血液の流れが停滞することで生じる不調を改善、シナモンやトウガラシは、末梢血管を拡張させて血液の循環をよくする 働きがあります。サフランは、血液の循環をよくして月経痛や更年期障害を緩和する働きがあります。ただし、サフランは子宮を刺激するため、  妊娠中の女性はできれば避けましょう。

スパイスの上手な使い方

風味づけに加えて、 塩分やカロリーを減らす

スパイスには減塩効果があります。調味料としていろいろな料理に利用すると塩分が少なくてもおいしく食べられます。スパイスの刺激的な風味は、味覚とは異なり、口腔内の粘膜を支配する神経から脳へと伝えられます。辛味成分は粘膜を透過しやすく、より強く脳が刺激を感じるため、少量の塩分で満足感が得られやすいのです。また、ヨーグルトやデザート、飲み物などにシナモンやバニラなどを加えると甘さ控えめでもおいしく感じられ、カロリーのとり過ぎが防げます。

野菜とスパイスを 組み合わせる

野菜を生で食べるときは、スパイスをプラスしましょう。体の冷えすぎを防いでくれます。 たとえば、サラダにかけるドレッシングに、しょうが、トウガラシ、カレー粉などを加えたり、 トッピングや薬味にしたりすると夏の冷え症対策になります。また、冷えやすい人や胃腸の 弱い人は、温野菜がおすすめ。生よりビタミンCは減りますが、加熱によって消化がよくなり、むしろ効率よく栄養が吸収されます。野菜の量もたっぷりとれます。さらに、温野菜に   スパイス入りのドレッシングをかけて食べたら足がむくみにくくなったという話を聞きます。塩分の摂取量が半分以下に減らせるので、むくみの予防にも役立ちます。

良質のたんぱく質と一緒にとる

スパイスは、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品や豆腐とも相性がよいもの。これらの食品には、良質のたんぱく質が含まれ、消化吸収も優れています。女性は更年期を迎えると女性ホルモンのエストロゲンが不足します。大豆にはこれに似た働きをするイソフラボンが含まれます。豆腐の料理にひとふりしたり、薬味として添えたりすると女性の健康維持に役立つ組み合わせになります。

植物油でおいしさを引き出す

甘いお汁粉に少量の塩を加えると味の相乗効果で、甘さが引き立ちます。スパイスと  植物油の組み合わせも似た効果があります。スパイスの芳香成分は精油の中にあるため、植物油に浸け込んだり、一緒に料理したりするとお互いのよさが引き出され、料理が一層おいしくなります。また、反対にあまり意味がない組み合わせもあります。例えば、ターメリック(ウコン)としょうが。スパイスとして使う部位が同じもの同士の組み合わせは、味の相乗効果は期待できません。

保存のきくピクルスにする

スパイスは酢ともよく合います。開封後のスパイスはカビや害虫がつきやすいですが、  ピクルスの風味づけに利用すると酢にスパイスの防腐作用が加わって、保存のきく常備菜が作れます。漬け汁は、スパイス入りのドレッシングを使うと簡単。さっぱりとした夏向きの味がすぐに作れて日持ちもします。見た目にもカラフルで食卓が華やぎます。

とり過ぎは逆効果

料理の風味をよくして、健康維持に役立つスパイス。でも、体にいいからといってととり過ぎは逆効果です。例えば、トウガラシ。辛味成分のカプサイシンには脂肪燃焼や食欲を増進させる働きがありますが、刺激が強いため、辛い料理の食べ過ぎは、胃の粘膜を傷つけます。スパイスは、「おいしい、楽しい、心地よい」を目安にして、適量を取り入れるようにしたいものです。

監修 百済診療所 院長 日本薬科大学 教授 丁 宗鐵

百済診療所 院長 日本薬科大学 教授
丁 宗鐵(てい むねてつ)プロフィール

1947(昭和22)年11月6日 東京生まれ
1966(昭和41)年 横浜市立大学医学部入学
学生時代から石原 明、大塚恭男、
伊藤 宏、大塚敬節各氏に師事
東洋医学、医史学、薬理学を学ぶ
国立がんセンター研修
1976(昭和51)年 同大学大学院 修了 医学博士
北里研究所入所
1979(昭和54)年 北里研究所 東洋医学総合研究所 医長
1979~1981年、米国スローン・ケタリング記念
癌研究所に留学
癌と免疫について研究
1983(昭和58)年 北里研究所 東洋医学総合研究所 研究部門長
1998(平成10)年 東京大学 大学院医学系研究科
生態防御機能学講座 助教授
2002(平成14)年 順天堂大学医学部 医史学 客員助教授
2004(平成16)年 日本薬科大学 教授

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