健康

【医師監修】痔 女性のこころとからだ事典

■記事監修医師
・女性のこころとからだ事典 からだ編 記事監修
東京都立築地産院産婦人科医長経て
いけした女性クリニック銀座 院長
池下 育子 先生

産婦人科医
医療法人社団鳳凰会フェニックスメディカルクリニック理事長・院長
賀来 宗明 先生

誰にも相談できず、ひとりで悩んでしまいがちな痔。実は、妊娠・出産経験者や便秘がちな女性にはとても多い病気です。日常生活に気をつければ、かなり症状が軽くなりますが、つらい場合は、勇気を出して診察を受けましょう。
 
 
 

●痔ってどんな病気?
痔というのは、肛門周辺の病気の総称。一般に、痔核(イボ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)の3つを指し、成人の3人に1人が痔持ちともいわれるほどよくある病気です。女性は、半数以上が痔核、次いで裂肛が多く、痔ろうは男性に比べて少数です。

女性の場合、慢性的な便秘や妊娠・出産が原因となることが多いようです。また、立ちっぱなし、座りっぱなしの仕事やストレス、冷えなども痔を悪化させます。

痔だと思っていたら大腸がんや大腸ポリープなど他の病気だったということもあります。自己判断せず、医師の診察を受けるのが安心です。

1.痔 核

肛門内の静脈がたくさん集まった部分に、血液がたまってふくらんだ状態が痔核です。歯状線の内側にできたものを内痔核、外側にできたものを外痔核といいます。

●原因
痔核は、肛門内の静脈の血流が悪くなり、うっ血した状態です。排便時の強いいきみや加齢、長時間同じ姿勢でいるための肛門への加重、日常生活の不摂生、ストレスなどが原因で起こります。特に女性の場合、妊娠・出産が痔には大敵。赤ちゃんの重さで肛門に圧力がかかるうえ、便秘になりやすく、出産時には強くいきまなければならないからです。

●症状

内痔核 目に見えず、痛みに鈍感な部分にできるので、痔核ができても気づかないこともあります。ただ、症状が進めば排便時に粘膜が破れて出血することも。症状の進み具合によって4段階に分かれます。
第一度 ごく初期。紙に少量つく程度の出血。
第二度 排便時に直腸の粘膜が痔核と一緒に脱出する(脱肛)。ポタポタと落ちる出血から、ほとばしるように出血することも。残便感も強い。
第三度 排便のたびに痔核が飛び出し、粘膜まで引きずられて裏返しになったような状態になる。そのたびに指で中に押し戻さないと戻らない。
第四度 痔核が常に出っ放しの状態に。第三度以上は、痔核が脱出して肛門括約筋にはさまれ、激痛をともなう嵌頓(かんとん)痔核を起こす危険があるので、早めの治療が必要。
外痔核 肛門の縁に、血豆ができて痛みます。
●治療
まずは、便通をととのえること。状態によって、座薬や軟膏の鎮痛剤や抗炎症剤を使ってイボを小さくします。内痔核の第二度までは、手術はしません。第三度以上で本人が希望した場合に行うことになります。外痔核は、早いうちであれば、温めて血行をよくし、軟膏や座薬を使うだけでもかなり良くなります。イボがあまり大きくなって痛みがひどい場合は、切開して血栓を取り除きます。
2.裂 肛


硬い便などによって肛門に切り傷ができたもの。排便時に激痛を感じることもありますが、しばらくすると、痛みは消えてしまいます。痛みがつらいために排便を避けがちですが、そうすると便秘になり、ますます肛門を痛めるという悪循環を起こしやすいので注意しましょう。早めの治療が大切。慢性化して潰瘍になると、手術が必要になることもあります。

●原因
一番の原因は、便秘です。便秘がちだと便が硬くなり、無理やり出すために肛門を傷つけてしまうのです。

●症状
排便時や排便時に肛門がひどく痛みます。出血は、紙でふくと少しつく程度。慢性化して症状が進むと、排便後の激痛が何時間もつづくようになり、傷が炎症を起こして激痛をともなう肛門潰瘍となります。

●治療
初期には、食事を見直して便秘を防ぎ、患部の清潔を保つことが大切です。同時に、便をやわらかくする薬や痛み止めの軟膏などを使います。慢性化した肛門潰瘍になると、入院して手術しなければなりません。


3.痔ろうと肛門周囲膿瘍

痔の中でも一番やっかいなのが痔ろうです。肛門の奥から細菌が入って、肛門の周囲が化膿したものが肛門周囲膿瘍で、痔ろうの前段階です。こうなってしまったら、自分で治すのは無理。

早めに専門医に診察してもらわなければなりません。膿瘍が自然に破れるか切開したあとが、炎症をくり返し、肛門の奥とつながってトンネルができた状態が、痔ろうです。痔ろうは薬では治らず、化膿をくり返して長い間に複雑化したり、がん化することもあるので、手術が必要となります。患者のほとんどは男性。特に下痢ぎみの人は要注意です。

●原因
肛門の歯状線にある肛門小窩(しょうか)というくぼみに傷がつくと、便に混じっている細菌で炎症が起こります。その炎症が広がり、膿をもった状態が肛門周囲膿瘍です。この膿瘍が自然に破れたり、切開した後に何度も炎症を繰り返し、体内に膿のトンネルが何本も伸びた状態が痔ろうです。

●症状
肛門周囲膿瘍は、突然おしりにおできのような腫れ物ができて、痛みます。発熱することもありますが、切開して膿を出せば治まります。痔ろうになると、おしりの皮下で膿のトンネルができるため、膿で下着が汚れたり、ベタベタすることがあります。

●治療
痔ろうの前段階ともいえる肛門周囲膿瘍は、切開して膿を出せばラクになります。ただ、この後痔ろうになる可能性が高いので、注意が必要です。また、痔ろうと診断された場合は、手術をしなければ治りません。放置しておくのは危険なので、早めに診察を受けることが大切です。

illustration/Tomoe Sasaki

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