健康

【医師監修】トラウマと心のケア PTSD PART3-2 女性のこころとからだ事典

■記事監修医師
武蔵野女子大学人間関係学部教授
臨床心理士、精神科医、医学博士
小西 聖子 先生

 

●被害者の周囲の人は何をすべき?

事件の直後は、ショックから心身ともにさまざまな症状が出ている時期です。周囲の人びとの何気ない一言が、ますます本人を追い詰めてしまうこともあるので、責めたり、お説教するのはやめましょう。励ましもかえってつらいこともあるので、しばらくは静かに見守ってあげてください。

以下は、武蔵野女子大学臨床心理センターで、レイプ被害にあった方とその家族・友人に渡している資料の一部です。

レイプ被害にあった方へ、ご家族・友人の方へ

このパンフレットは、性的な被害にあった方や、そのご家族、おともだちのためのものです。レイプや性犯罪は暴力による犯罪です。あなたが若くても、年配の方でも、お金持ちであろうとなかろうと、どこに住んでいても起こりうることです。あなたの落ち度ではありません。

病院に行きましたか
体の内部に傷はありましたかその他の傷の手当てはしましたか性病の感染はありませんか(数週間たってから再検査が必要です)妊娠の恐れはありませんか血液検査をしておきましょう眠れないなら、しばらく入眠剤など助けを借りることも必要です
どんな生活をしたらいいでしょう
まず、自分が安全だと思えるところへ行きましょう。また被害にあうのではないかという気持ちがあるかぎり、落ち着くことはできません。

犯人が怖い、自分を責めてしかたない、ひとりぼっちで何もできないような気がする……。こういう気持ちを周囲の人にわかってもらいましょう。あなたのまわりの人は、あなたに対して「不注意だ」とか「行動が悪い」などというかもしれません。でも、たとえあなたが不注意なことをしていたのだとしても、レイプされたくてやったのではないのです。あなたの心が傷つき、助けを求めていることをわかってもらいましょう。
自分の生活をとり戻しましょう。小さなことでもいいのです。食べたり、着替えたり、風呂に入ったり、寝たり、日常生活に少しずつ戻りましょう。

家族や友人の方へ
被害者をひとりぼっちにしないでください
話を聞いたときに嫌な顔をしたり、軽べつしないでください。
本人の話を「そんなはずはない」と否定したり、頭から決めつけないでください。腹立ちのあまり、本人を責めないでください。被害者は傷つき弱くなっています。しばらくの間は静かに見守りましょう。説教や激励はこの時期にはつらいだけです。いろいろな心と身体の症状はだんだんと回復していきます。それえでも短くても、数ヶ月はかかります。長い目で見守ってください。

text/Mami Kakuta
illustration/Tomoe Sasaki

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