健康

【医師監修】トラウマと心のケア PTSD PART4 女性のこころとからだ事典

■記事監修医師
武蔵野女子大学人間関係学部教授
臨床心理士、精神科医、医学博士
小西 聖子 先生

 

トラウマ体験後にPTSDを発症した場合、治療にはかなり長い時間かかることが多くなります。それでも、治療法を受けるうちに、楽になったり、新たな人生を踏み出せる人が多いのです。ひとりで苦しまず、一歩踏み出してみませんか。
●治療の目標
長期的なケアとしては、やはり専門家やセルフヘルプグループ(当事者の自助組織)のサポートを受けることをおすすめします。トラウマに関わる感情をなんらかの方法で表現し、それが受け入れられること、それによって記憶をコントロールし、通常の生活を送れるようになることが、治療の目標です。

心の傷を忘れることはできませんし、元通りになることもありません。でも、出来事を自分の人生に起こった事として思い出すことができ、それなりに新しい人生に踏み込んでいけるということなのです。

●さまざまな治療方法
治療方法としては、症状に応じた薬を飲むだけでよくなる場合もありますし、逆にカウンセリングだけで快方に向かうこともあります。犯罪被害者の遺族や虐待、強姦被害などで重症の場合、両方が必要となるケースが多いようです。
薬による治療 不眠には睡眠薬、うつ症状には抗うつ剤など症状に応じた治療をするだけで、かなり良くなる場合もある。
カウンセリング療法 専門家やセルフヘルプグループ(当事者同士の自助組織)で、カウンセリングを受ける。基本的に、トラウマに関わる感情を表現することと、それが受け入れられることが原則。
認知行動療法 きっかけとなった体験に慣れる方法。体験した事件について話したり、事件に似た刺激を積み重ねて慣れていく。また、トラウマによって生じた罪悪感や自己評価の低下を引き上げる。
催眠療法 心と体の筋肉を弛緩、解放させるリラクゼーションなどに使われる。小説に出てくるように忘れていた過去を思い出したり、別人格を呼び出すような劇的なものではない。
EMDR
(眼球運動による
 *脱感作処理法)
トラウマティックな記憶には神経学的基礎がある、という考え方が基本となった治療法。眼球を左右にリズムカルに動かすことで当時の出来事を思い出し、トラウマティックな記憶に伴う苦痛を和らげていくもの。とても効果のある人とない人がいる。
巻き戻し法 自分のトラウマ体験を心の中で映像化して見る方法。
家族療法 被害にあった本人だけでなく、家族みんなにカウンセリングに参加してもらう。カウンセラーは家庭内の構造を知ることができ、家族も問題を認識できる。
*脱感作…過敏になっている状態をだんだん慣らしていき、正常に戻すこと。

*脱感作…過敏になっている状態をだんだん慣らしていき、
正常に戻すこと。

●PTSD関連サイト
IFF
家族機能研究所(斉藤学代表)の関連会社のサイト。電話カウンセリングや面接カウンセリングも可能。PTSD関連のセミナーや書籍の情報も。
text/Mami Kakuta

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