健康

【医師監修】トラウマと心のケア PTSD PART2-1 女性のこころとからだ事典

■記事監修医師
武蔵野女子大学人間関係学部教授
臨床心理士、精神科医、医学博士
小西 聖子 先生

 


PTSDはまだ名付けられてから歴史の浅い病気なので、専門家も少なく、診断が難しいのが現状です。PTSDなのに「うつ病」と診断されてしまったり、またその逆のケースがあったりもします。つらいできごとの後は誰でもいろんな症状が出ますが、PTSDとはどう違うのでしょうか。


●PTSDの症状
PTSDの症状には、以下のような典型的な症状が挙げられます。

1.出来事の再体験

事件の記憶が、自分の意思とは関係なく「侵入的に」よみがえります。「フラッシュバック」といって、思い出そうとしていないのに、もう一度、同じ場面、同じ恐怖を再体験してしまうことも。誰でもいやなことを思い出してしまうことはありますが、これは、通常の回想と違って、生なましい感情をともない自分でコントロールできないものです。あるいは事件に関する幻覚が起こったり、同じ夢を毎日見てうなされたりするという症状もあります。

2.回避・麻痺

事件を思い出さないように、刺激を避け、現実から逃れる傾向のことです。たとえば「レイプ被害にあった場所に近づくだけで気分が悪くなるので行けない」。また、「何もしないで家でボーッとしてる」など感情が動かないケースや「殴られた跡があるけれど、何も覚えていない」など事件の記憶がなくなっていることもあります。人と関わりを持てなくなったり、周囲や社会に強い不信感を持つ場合も。
3.常に緊張してビクビクする

リラックスすることがなく、常に緊張してビクビクした状態です。怖い夢をみたりして、熟睡することができないので、不眠に悩まされます。このほか、イライラする、物覚えが悪くなるなどの症状もあります。
●PTSDの診断

強いストレスや恐ろしい体験をすれば、誰でも上記のような症状が出ますが、1~3の症状が1ヶ月以上つづき、そのために日常生活に障害があったり、非常に苦痛であるときに、PTSDと診断されるのです。
text/Mami Kakuta
illustration/Tomoe Sasaki

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